2014年5月9日金曜日

難聴について―感音性難聴と補聴器

   耳の構造(図はワイデックスさんにお借りしました)

感音性難聴

私は感音性の難聴者です。声は聞こえても言葉の聞き分けができません。聞こえる音程が狂ってしまうので美しい旋律も和音も楽音にはなりません。見かけには異常がないから他人には私が耳に障害があることはわかりません。耳に手を当てて聞き返す仕草をすれば、相手も気がついてくれます。電話ではそれができないのでホントに困ります。

感音性というのは耳の構造の感音器官(内耳や聴神経)に故障がある症状です。ほかに伝音性難聴があります。伝音器官つまり外耳や中耳に故障がある症状です。伝音性難聴は鼓膜の外傷など治せることが多いようですが、感音性の場合は治療が難しいとされています。

年をとって耳が少しずつ遠くなるのを老人性難聴といいますが、言葉の聞き分けが難しくなるのも老化です。内耳の蝸牛にある有毛細胞が加齢によって減少するのが原因とされています。細胞再生医療が研究されていますが遠い将来のことです。 
加齢による難聴は生理的現象なので治療対象になっていないのが現状です。それにもかかわらず、耳鼻科に症状を訴えると何らかの手当てをしてくれるのが普通です。善意に考えれば難聴の原因は千差万別であり個人差も大きいため、医師が見当をつけて治療を試してみるという姿勢の表れと思います。3ヶ月ほど通院した後で、これ以上はよくなりませんということになるでしょう。ですから患者自身も賢く医師とつきあう姿勢が望まれると考えます。

補聴器について

最近のように世の中に老人が増えてくると補聴器の広告宣伝が目立つようになりました。老人性の難聴には補聴器による救いは大きな役割を果たします。ただし、感音性難聴には効果がすばらしいとは言えません。限界があります。

補聴器の原理は耳に集まる音を耳元のマイクで拾って拡大して耳の内部に伝えます。どの程度の広がりで集音するかは補聴器の性能に大きくかかわります。虎の門病院の熊川部長先生によれば4メートル以内の音を拾うように設計されているそうです(2014/2/23NHKTV)。ですから、それ以上離れている人の声は補聴器をつけてもよく聞こえないという理屈です。
4メートル以内の声であっても大きくするだけでは聞き分けができるとは限りません。感音性難聴では効果が上がりません。

話をする場にはいろいろな音が混じります。人間の耳には聞こえない低周波もあります。老人性難聴の傾向は高い音が聞こえにくいと言われます。雑音の多い場所では聞こえるはずの低い音も無用の音に混じってしまって、聴き取りができなくなります。補聴器では音質や音の強弱を選択して最適になる工夫もしますが完全は期待できません。

感音性難聴者はできるだけ補聴器を使って相手の話を聞きとる努力が期待されます。
難聴者に話しかける人は、できるだけ静かな場所で、耳元に向けて、ゆっくり、分かりやすい言葉で話してほしいと思います。女性の声は聞きにくいとよく言われますが、女性の声は高くても強ければ聞こえます。聞きにくいのは弱い声で、女性男性の区別はあまりなさそうです。口先だけの発音はいつの場合でも落第です。

日本語の音声は母音と子音で言葉が作られます。子音の発音は一般に弱いのです。たとえば、キ、シ、チの区別は難しいので、別の音の言葉に言い換えるなど工夫もほしいところです。
知らない話題や外来語も聞き手の想像で補いにくいから聴き取りが難しくなります。健常の人でも普通は耳に入るすべての音声を全部分かって理解しているのではないのです。部分部分から関連する言葉を脳が判断して理解を助けています。

話し手と聞き手、お互いの理解のために難聴の知識と補聴器の知識の普及が望まれます。私の経験では補聴器外来という部門を備えた耳鼻科が親切だと思いました。購入の義務はありませんでした。補聴器の購入のコツは徹底的に使用者と話し合いながら長期間にわたって調整してくれる業者を選ぶことです。買ってすぐに好調なわけはありません。
(2014/5)

【追記】
2015年6月16日テレビ朝日報道ステーションで京都大学の研究室が聴神経細胞の再生の手ががかりを得たことが報じられた。マウス実験の成功を関谷医師が語っていた。難聴者にとっての大朗報だ。
詳細が京大のホームページにあるのでここに紹介しておく。
www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~ent/Topics/ir/regeneration.htm

(2015/6)