2021年10月21日木曜日

眼の手術をした話

 眼の手術をした。白内障の手術をしてもいい時期にきてますよと言われた。自覚症状もないしそんな気はないから、そうですかとだけ返事しておいた。そのときはドライアイを診てもらっていただけだったが、次の機会に手術しなければどうなるのか訊ねてみた。見えなくなります、あっさり言われた。放任して見えなくなるのと寿命が尽きるのと、どちらが早いかなど考えたりした。まだ旅立つことにはなりそうもないし、半ば好奇心も手伝って、お願いするとすればどんな段取りになるのか、日を改めて聞くことになった。手術日の設定はかなり先のことだ。コロナのワクチン接種を済ませてからと考えて8月半ばに手術を受けることにした。

ドライアイの診察は次席の女医さん、手術についての一般説明は専任の看護師さん。この医院では男性は院長一人だけ、全部で10人あまりの陣容だ。

説明には立派なパンフレットが準備されていて、知識のない当方の疑問に先回りするような懇切丁寧な解説が絵入りで書かれていた。

手術前から手術当日までの三日間は3種類の薬が処方され、患者は自分で使い分けて点眼しなくてはならない。医師と共同作業の形だ。

同じ眼に2種類以上の点眼には5分の間隔をあけなくてはならず、両眼の場合、3種類それぞれの使い分けはかなり複雑なことになる。院長が患者の眼を直接診るのは手術当日だけで、術前術後とも複数の看護師によって数種の検査機器で読み取った状態を院長が映像とデータで診断する。

この医院は日頃の診察も手術日も来院時間が指定される。コンベアこそないものの全ては流れ作業で多くの患者を手際よくさばいている。手術当日は来院時間の指定があるほか、手術3時間前から2種類の薬を1時間おきに決められた時間に点眼しなくてはならない。最終の点眼が終わると、頭部と全身に手術着を着用させられて待機する。

手術日は週二回午後から、一度に片眼だけ、一人あたりほぼ15分ぐらいで終わる。中には30分かかる患者もある。観察の結果一日に20人ほどが施術されるようだ。終わると厳重に片目を覆う眼帯がつけられて翌日までとれない。翌々日まで3日間は機器検査と院長の診察がある。その後は週一回の検査と院長診察に通う。術後10日間は保護メガネをかけることが強制される。4週目からは間隔が1か月、次は6か月おきになる。術後は自分で3種類の薬を使い分けて1日2~4回を1カ月間、うち1種類は3か月後まで毎日点眼しなくてはならない。

最初の事前説明のときに、あらたに挿入される眼内レンズを希望選択する。単焦点レンズであれば健康保険の適用がある。遠近2重焦点、遠中近3重焦点それぞれのレンズが開発されているが、これらを挿入するのは手術費全額が自費負担になる。私は若い頃からメガネ常用者で、最近は遠近両用レンズやパソコン作業には中近用などいろいろ使っているから、遠用単焦点を選んだ。近距離には別途メガネを使うことになるが、これまで常用者だから負担には感じない。老眼になってからでも乱視もあるし視力も変わるから、眼内レンズでは交換の自由は利かないだろうと判断した。ちなみに手術費用は医院の診療費明細には水晶体再建術121000点とあったから、自己負担割合が1割ならば12,100円だ。 

術後1カ月過ぎるまではメガネは調製しないように言われる。眼の具合が安定しないからだ。メガネなしで外出するのは実に久しぶりだったがほとんど問題ない。ただし、手元や細かい文字は読めない。従来のメガネは遠近用も手元用も、もはや役に立たない。手元の細かい文字などが見えないと、外ではたいして問題なくても家の中では困ることが多い。年をとって巣ごもりが常態だから本が読めないし、新聞も見出しだけで我慢する。パソコンは大画面モニターを繋いでいるし、電子本も拡大できるから問題ない。テレビは見えなきゃ困るというものではない。スマホは文字が見えなくても電子マネーはなんとか使える。しかし、日常生活で不自由なくできることは僅かしかない。

退屈しのぎに自家製DVDで映画を見てみた。難聴だから音楽がだいじな要素になるものは見ない。黒澤明監督の『待ち伏せ』があった。三船敏郎のセリフはいつもどおりでよく聞き取れないが、ストーリーは単純だからそれなりに面白かった。

こんな日常で読み書きなしの2か月が過ぎた。家族のアルバムが嵩張ってきて、いざ店じまいのときに困ると思いつき、スキャンとプリントで整理を思いたったらプリンターに意地悪された。複合機は値段は安くなったが修理費は割高だから、キャノン買替便というのを利用して新しくした。時代はPCよりスマホ優勢だから、新製品は何かにつけスマホに便利に仕向けてある。我流でパソコンとつないで作業しようとしても素直に動かない。やっと自分流に使いやすくなったが、なにか無駄な造りが増えた感じである。今はとにかくこれで時間をつぶしている。

読み書きを休んでいる間にノーベル物理学賞が決まった。ひとりは真鍋淑郎さん、90歳だという。自分と2歳しか違わないので嬉しくなった。好奇心が気象に向いていたのが良かったとのこと。気象というのは物理学では複雑系になるのかな、要素還元主義の時代に寺田寅彦は複雑系を考えていたなどと考えを巡らせていたので、早速なにか関連本を読もうとしても運悪く字が読めない。

実は、手術からひと月過ぎて早々にメガネを誂えた。癖になっているのでメガネがないと自分で自分のような気がしないのだ。遠近用で遠の部分に度が入っていない。近用部分の面積が大きい。これで手元もほぼ困らなくなったが、それでも本を読むには目が疲れる。レンズは眼と合っていても、メガネを耳にかけ、鼻で支え、そのうえ読むときには姿勢と顔の上下の角度がさまざまである。結果として眼とレンズの角度がずれる。解決策は手元専用メガネで補うことだ。かくしてメガネ到来まで今しばらく辛抱の時期が続いている。

そうそう、いつの間にかWindows 11の更新準備ができたとパソコンに通知が入っていた。暇つぶしにいいと思ってダウンロードを始めたが、インストールを含めて2時間近くかかったのでないだろうか。何の問題もなく終わったが、とりあえず開けてみた画面はタスクバーのアイコン群が中央に来たほか目立った変化はない。動かしているうちに少しずつ変わった部分に気がつくが、使う手順もそれなりに変わった。わかってみればアップデートする必要もなさそうに思えるが、素人にはわからない部分でセキュリティが向上したのだろう。無料だというのは実感として当然だ。徒然なるままに綴ってみた近況はこんなところです。(2021/10)